みやの/（20）

T163/ B94(G)/ W60/ H102

2025/02/24 13:21

春めいて

今年も例年通り、3月に入っても寒い日が続いている。そんなある休日の昼下がり、仕事の締め切りに追われて外に出る機会も減っていた私は、ふと窓の外に目をやった。

陽射しに誘われるように外へ出てみると、確かにまだ冷たい風は残っているものの、光の色が違う。どこか柔らかで、温かみを帯びている。ちょうど近所の女子高生が友達と下校している姿が目に入った。制服のスカートがひらひらと風に揺れながら、「あー、でも今日なんか春めいてきたね」という声が聞こえてきた。

思えば自分も学生時代、似たような会話をしていたな、と懐かしさが込み上げてくる。当時は季節の移ろいにも敏感で、春の訪れを待ち望んでいた。今では仕事に追われる日々で、そんな些細な変化にも気付かなくなっていた。

彼女たちの声に導かれるように、改めて周囲を見渡してみる。街路樹の枝先には、確かに小さな芽吹きの兆しが見える。公園には桃の花が静かに咲いている。

「春だな」

ふと口をついて出た言葉に、自分でも少し照れくさくなる。でも、こんな風に季節を感じる余裕を持てることは、案外大切なことかもしれない。

明日からまた忙しい日々が始まる。けれど、たまにはスマートフォンから目を上げて、空を見上げてみるのもいいかもしれない。そこには、確実に春が近づいているのだから。