さき/（30）

出会いもあれば、別れもある。

上京したばかりの頃、
知らない街の景色が、やけに広く見えた。


友達なんてほとんどいなくて、
誰かと過ごす時間のありがたさを
あの頃、ひしひしと感じていた。


そんな時、偶然のように、運命のように
福岡で同じ職場だった彼女と再会した。


同じように上京してきていて、
同じように少しだけ寂しさを抱えていた。


方言で笑い合えることが、
こんなにも心をほぐすんだと知った。


美術館を巡った。
遠くまで出かけた。
アフタヌーンティー、ピクニック、
たわいない会話も、真夜中の本音も、
たくさんの時間を一緒に重ねた。


あの頃は、
ずっとこの関係が
続いていくような気がしていた。


でも、人生は思い通りにはいかない。


一緒に行こうと計画した海外旅行は、
私の事情で白紙になった。


それから彼女とは、
そっと距離ができてしまった。


ごめんも、寂しいも、
うまく伝えることができないまま。


それでも、思う。
縁は、繋がる時には繋がって、


切れる時には、
ふっと風に吹かれるように
離れていくものなんだと。


きっとそれでいいのだと思う。


あれから私はまた、
新しい景色の中で、
新しい人たちと出会った。


出会いと別れを繰り返しながら、
少しずつ、私は私の物語を紡いでいる。