五反田店 11時-翌3時
さき/(30)
T153/ B91(F)/ W58/ H88

🎬 希望と絶望のはざまで。—『あんのこと』を観て感じたこと。
先日、アカデミー賞関連の話題で
取り上げられていた『あんのこと』を観た。
実話をもとにした作品で
毒親、売 春、薬物依存と
壮絶な人生を生きる少女の姿が描かれる。
観ている間ずっと
胸が締めつけられるような感覚が続き、
何度も言葉を失った。
暴力や搾取の連鎖の中で
生きる主人公・杏。
愛されることを知らず
逃げ道もなく
ただその場を生き延びることしかできない。
彼女が歩んできた人生はあまりにも過酷で
見ているだけでも心がえぐられるようだった。
しかし、
そんな彼女にも手を差し伸べる人がいた。
刑事の多々羅は
彼女の過去を知りながらも、
見捨てることなく更生を支えようとする存在だった。
彼の言葉や行動を通じて
杏は少しずつ変わっていく。
働くことの意義を知り
学ぶことの喜びを感じ、
安心できる暮らしの大切さを実感する。
彼女の表情が少しずつ柔らかくなり、
生きる意味を見出していく姿に
心が動かされた。
しかし、現実はそれほど甘くない。
過去の傷は簡単には癒えず、
社会の厳しさは容赦なく彼女を追い詰める。
どれだけ努力をしても、
積み上げたものが一瞬で崩れてしまうこともある。
ネタバレになるので詳しくは書かないが、
最後に刑事の多々羅が語った言葉が強く心に残った。
彼の涙に込められた想いが
主人公が歩んできた道の重さを
物語っていたように思う。
その言葉を聞いたとき、
どうしようもない現実と
彼女の人生に対する無力感が
一気に押し寄せてきた。
この映画を観て、
改めて自分の環境を振り返った。
日常のなかで、
自分が当たり前だと思っているものの
大切さに気づかされた。
温かい食事を囲めること
安全な場所で眠れること
心を許せる人が身近にいること。
そのどれもが
実は決して当たり前のことではない。
そして、
それらは過去の積み重ねによって
築かれたものなのだと痛感した。
同時に、
自分自身を愛し、認め、
労わることの大切さを考えた。
どんなに苦しい状況にいても、
自分を否定せずにいられること。
それがどれだけ難しくても、
大事なことなのだと。
観終わった後、
ずっしりとした余韻が残る作品だった。
決して気軽に観られる映画ではないし、
楽しい気分にはならない。
それでも、社会の現実を知るために、
多くの人に観てほしいと思う。
なぜなら、そこに描かれているのは、
決して他人事ではない現実だからだ。